花や自然、暮らしをテーマにした
花のコラム



「こまきね流自然塾」



森の中、里山、海、砂浜、そしてわたし達が住むこの街中にも知られざる自然界の法則が確実に存在しています。筆者と共に、身近なところに宇宙の真理と神秘を探してみませんか?


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こまきね流自然塾
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こまきね流自然塾 バックナンバー
Vol.1 百合の引っ越し
Vol.2 『手の平を返す』ガクアジサイ
Vol.3 遅れてくる子たち
Vol.4 「実を着けるということ」
Vol.5 「産まれたところが一番<前編>」
Vol.6 「産まれたところが一番<中編>」
Vol.7 「産まれたところが一番<後編>」
Vol.8 オキナグサの「啓蟄(けいちつ)<前編>
Vol.9 オキナグサの「啓蟄(けいちつ)<後編>

Vol.10コケリンドウ
Vol.11シラネアオイの気品(一)
Vol.12シラネアオイの気品(二)
Vol.13シラネアオイの気品(三)

――― 植物のイデアK―――
   シラネアオイの気品
      <第二回>
 世界の中で日本にしか無い一属一種のシラネアオイ科である、極めて貴重な草ということも分かり、栽培に力が入りました。何とかして我が家の作場で、あの花を咲かせたい。片品村の、ていねいに包んでくれたあの人の一言一言を、大事に守って作りました。3年目の春先、東京郊外に遅霜があるころ、やっと蕾があがってきました。アオイに似たような葉の包みの中の頂点にあたるところに、小さな「おつまみ」みたいな蕾がちょこんとのっかっていました。
 朝に夕に、気がつくとその鉢の前にかがんでいました。寒い朝などは、顔を近付け、ハァーと息を吹き掛けました。

 私の息の中に、毒っ気があったのでしょう。草丈が伸びるにしたがって、頂点の"おつまみ"は色が変わってきました。初め薄黄色になり、やがて褐色になり、ちぢんできましたきました。しまいには、黒く破れた塊になってしまいました。大変な失敗でした。前年までの成育不良、肥料不足でした。

 その年の秋、待望の2坪ほどの温室ができました。屋上に建てたので、植物の冬越しには最適だと勝手に思い込みました。シラネアオイをもちろん入れました。
 翌春です。カトレア類の仲間は例年になくいい状態で冬を越し、花を付けました。目指すのはシラネアオイです。いつもですと、残雪の中に、蕾を包んだ葉の頭が出てくるのです。3月末になっても、鉢の表面に変化がありませんでした。たまりかねて、そおっと表土をかき分けてみました。根も葉もありません! その分の空洞があるだけでした。驚きと落胆が一緒に来ました。

 私は、自然に逆らった大きな過ちをしたのです。亜高山性で残雪の中に咲くこの子を、冬、温室に入れたのです。サハリンの植物を熱帯地方に移したようなものです。自然の在り方に則って、それに近付けた育て方をしなければならない鉄則を、あまりの可愛がり過ぎで、忘れてしまっていたのです。

 
  ―――つづく―――

by F.KOMAKINE