花や自然、暮らしをテーマにした 花のコラム 森の中、里山、海、砂浜、そしてわたし達が住むこの街中にも知られざる自然界の法則が確実に存在しています。筆者と共に、身近なところに宇宙の真理と神秘を探してみませんか?
初めにこの草の「葉芽」がサナギ状に見えたのには、驚くほどの知恵が込められていたのに気付かされます。 実は、陽光を受ける大事な役目を受け持つ葉の「表側」を内側に巻き込み、細長い円筒のように保護しているのです。筒の外側となる葉裏の色は、まるで周りの枯れ葉か土の色に似ていて、サナギもどきの擬態にも思えます。しかもこの色は、早春に限って見られるのです。 盛夏の頃の葉の展開は、巻き方は同じでも芽の色はすでに緑で、伸び方も株元からやや離れるなどということもしないで、叢生状に生えます。 私の思い入れで偏った観察ですが、これによって早春のまだ「緑」の少ない時期、虫たちからの食害を極力避けようとする生き方なのだと思えてなりません。
十月中旬、晴れた日、他のスミレの実の1.5倍もある刮ハを摘み採り、透明な計量カップの底に置きました。数分後のことです。ピシッ!というきつい音がして、直径10.5p、深さ13.5pのカップの中から、三片の刳kを残し、30粒近い種子が、まるで洞穴の底から垂直に飛び上がり、四方に逃げ散ったように見えました。 一粒も残っていませんでした。驚きました。一粒一粒が、まるでそれぞれに「意思」ほ持っているかのように飛び散りました。 慌てて「粒」を探し回りました。見当を付けていたところで探し当てた一粒は、なんと5mも飛んでいました。
刳kをもう一度改めて見つめました。 種子をはじき飛ばした後は、小鳥の三本の足指が行儀良く開いたように、端正な姿で済まし込んでいました。 太陽光線と、空中湿度の微妙な組み合わせで、殻に仕組まれた「子孫」の送り出し機構が、まさに有効に働いたのです。 群生ではなく、孤高に生きるように、何千年もかけての生き方を選んでいるのでしょう。
スミレの仲間には、草木から木の形をとるものまであるといいます。 高木のスミレなんて想像することもできませんが、遺伝子、染色体数などから、スミレの仲間だそうです。 たかがスミレ、されどスミレ。生き物すべてそのような尊さがあるのですね。