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全部の糸が膨らみ終えると、白髪をたくわえた翁がそこにいます。野原をわたる風を受けると、オーケストラの白髪の指揮者の髪が揺れ乱れるように震えます。
やがて翁の綿毛は、高く掲げられたミニ竹竿の先から、風に乗って、不器用に飛び立ちます。飛び立つというより、風に乗り損なった風情に見えます。この不器用さが、この草らしいところです。
実は、ここにもイデアがあるのを感じます。それは、タンポポのタネの飛翔にくらべて感じる、この草の奥深い知恵のことです。
タンポポのタネの旅支度は、空中に舞い上がり、遠くまで移動するのをあらかじめ見込んだ、2〜3日分の弁当まで用意したような落下傘タイプです。いわば国をこえてでも新天地に根付こうという旅立ちです。冒険家です。
対して、オキナグサの支度は、あまり遠出をしない、汗を拭う程度の布とおにぎり1食分わ背中にくくリつけ、綿づくりの寝袋持参タイプなのです。国境を越えたり、ジャングルに入り込んでの新地開拓には向いていません。
風に乗るのが下手なのではなく、自分のねらいにあった旅支度なのでしょう。おそらく、何千年、何万年もの時間をかけての、今の生き方なのだと思います。
このタネが芝草にたどりつき、そこから地中にたどりつき、そこから地中に潜り込むまでの姿は、また一編のドラマです。
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