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植物のイデアG―――
オキナグサの「啓蟄(けいちつ)」
<前編>
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私が野の花・山の草に魅せられるようになったのは、4〜5歳ころからです。それに、好きになった「草」を、なぜかはっきり覚えています。「オキナグサ」です。
山の北側の窪地の残雪も消えるころ、日向(ひなた)の草地のあちこちに、銀色の軟らかい羽毛に包まれた小さな繭玉のようなオキナグサの“つぼみ”が、うつむいた形で萌え出てきます。晩霜の枯れ芝のなか、地面を突き破って出てくる、そんな力がどこにあるのかと不思議に思える軟らかさです。そうっと指でなでると、子兎の耳のような感触です。
温かぁい、かわいい、の二つが結びついて、私の幼児期の記憶に残っているように思います。
自生地のものの多くは、日向を好むといっても、樹木すら成長できないような不毛の原野・草地に顔を出すのがオキナグサです。
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| オキナグサは、いわば植物の啓蟄(けいちつ)
版です。啓蟄は、『寒さに忍んでいた地中の虫たちが、雪解けのあとの温かさに誘われ、手足を伸ばすように地上に這い出る』の意味です。植物に啓蟄の言葉を当てることは不適切で、誤りですが、オキナグサの萌え出る姿を見ていると、まるで虫や動物たちと同じような生き物に思えてなりません
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同じころ、いち早く季節を告げてくれる野の花に、鮮やかなスカイブルーと白色のコントラストで人目をひくオオイヌノフグリがあります。この草は、ヨーロッパ原産の帰化植物です。人とのかかわりをもって移動し、広がった植物です。人間の動きや移動にまつわりつくような経路・・・・・・畑のかたすみや道端に沿って生えています。やはり、陽当たりの良いところが、この草の住家です。ですから、幼児の手を引いた母親や祖母ちゃんから
『おやっ! もう春だね』
などと声をかけてもらえる目立つ存在です。
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それに比べてオキナグサは、自然のままでは、とても幼児の目に付くようなところには生えていません。もともとの野生児で、都会の人や古くから開けた農村地区などでは、たとえ日当たりのいい草地でも、栽培したものでないかぎり、見かけることは稀なようです。
陽光をたいへん好みます。そのため、他の草原が伸びきって葉を広げ、互いに光を奪い合い、遮(さえぎ)り合う状態を好みません。だからでしょう、他の草がまだ顔を見せないうちに、「早起きは三文の徳」とばかり、野の草のトップランナーの一員として萌え出てきます。
広い野原ですと、ばらばらに散らばった状態で生えています。ニリンソウやキクザキイチゲのように仲間が肩を寄せ合う“密生”は見られません。そこが、この花の持ち味です。とにかく、他と巡り合うのを避けているように見えます。
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オキナグサの「啓蟄(けいちつ)」(
その二)は、次回にお届けします。どうぞお楽しみに。
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by
F.KOMAKINE
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