こまきね流自然塾    筆者と共に、身近なところに宇宙の真理と神秘を探して見ませんか?

Vol.1 百合の引っ越し
Vol.2 『手の平を返す』ガクアジサイ
Vol.3 遅れてくる子たち
Vol.4 「実を着けるということ」
Vol.5 「産まれたところが一番<前編>」
Vol.6 「産まれたところが一番<中編>」
Vol.7 「産まれたところが一番<後編>」
Vol.8 オキナグサの「啓蟄(けいちつ)<前編>
Vol.9 オキナグサの「啓蟄(けいちつ)<後編>

Vol.10コケリンドウ
Vol.11シラネアオイの気品(一)
Vol.12シラネアオイの気品(二)

――― 植物のイデアJ―――
   シラネアオイの気品
      <第一回>
 仕事で群馬県と長野県の県境、草津から山ノ内町にかけての山田峠を車で越えた時のことでした。白根山の中腹あたりの木々の緑はまだ淡く、頂上付近には、斑(まだら)模様の雪が残っていました。
 中腹からやや急な道を下った時のことです。林の床の部分に薄日がこぼれ、落ち葉の朽ちた色のなかに、突然、一ヵ所パッと明るいものが目に入ってきました。絵本「かぐや姫」の初めのところで、竹の節が光っているような感じをうけた瞬間でした。
 車を止め、20mほど山に入って、その“もの”に引き寄せられるように近付きました。ピンクがかった薄紫色の、山草にしては目立ち過ぎるほど大きめの花びらを4枚ずつ付けた花が、12〜3個も咲いていました。花から畳半畳分ほどの間合いをとり、腰を下ろしました。

 時間を忘れました。何度か深く息を吸いました。これが、シラネアオイとの初めての出会いでした。

 花の直径が10cmほどもあり、草丈は25〜6pほどで、周囲の草たちより早い成長に見えました。もちろん、その時にはまだ何と言う草なのか、名前すら分かりませんでした。三十歳代終わりのころのことです。

 忘れられないこの草に再び会うことになったのは、「尾瀬」を尋ねるようになってからです。群馬県片品村を通る時、ある民家の庭先に、なんと、こんもりとした姿で、栽培(つく)られていたのです。私は、アラレモナイ姿で、その家に飛び込んでしまいました。何とかしてこの「やまくさ」を我が家の仲間にしたいものだ、と思ってから20年あまりも経っていました。
小さい腋芽の部分をていねいに株分けしてもらい、作り方も詳しく教えてもらいました。

 
  ―――つづく―――

by F.KOMAKINE