きんや先生の雑木ばなし    vol.8 ススもスス、スシもスス



 だいぶ前のこと。
遠野にすんでいたころ、よく山の中を歩いていました。
 
 夏のある日、家里近くの牧草地をブラブラしていたら突然目の前に (といっても、20〜30m先) 銀色の子牛くらいの生き物が現れました。カモシカです。牛のような少しボンヤリした顔です。じっと私の方を見て動きません。私も興味があるのでずっと見つめます。見つめ合ってどちらも動かない状態がしばらく続きました。私も疲れたので目をそらすと、あちらも少し動きます。顔をあげると、また止まります。このくり返しが続いてからようやく、林の中に消えていきました。
 
 実はこのカモシカの性格が彼らの悲劇を生むのです。
 
 

 遠野には昔、獣がたくさんいました。
熊、猪、鹿、猿、狐、狸・・・・・そしてカモシカ。

 

 猪、鹿は農作物を荒らす害獣で鉄砲を持つマタギが退治しました。
カモシカは農家に被害を与えたりはしなかったのですが、なにせ毛皮が高級品として取引されたことと、角がイカ釣用の疑似餌の材料として使われたことで、ずいぶん殺されたそうです。

 マタギが火縄銃を使用していたうちはまだよかったのですが、村田銃という近代的な銃になってから、猪、鹿、カモシカ、猿などが激減したのです。
猪などは落とし穴で捕まえていたくらいですから・・・・・。

 いまでは全然いません。

 
 そうやって捕まえていた獣の肉は街の市の日に肉汁などで売られていたそうです。鹿はカノスス、猪はイノスス、カモシカはアオスス(青鹿)。みんなスス汁なそうです。
 
 なにしろ、鮨もスス、煙突の煤もスス、鹿(獅子)もススなのです。特にアオススは美味しかったそうです。今は天然記念物として保護されていますから、とても食べるなんて不謹慎なことはできませんが・・・。
 四足の肉を食べない時代も、薬だといっては、若者達は集まって酒を飲みながら食べたそうです。
 
 まあ、いつも飢饉の危険にさらされていた北東北ですからかんべんしてください。
 

 なにしろ肺病(結核)の特効薬ということで、猿の皮をはぎ、丸煮にして食べていたというのだからビックリです。
知らずに鍋を煮ている所を見た人はもっとビックリで、人間の赤ん坊を煮て食べているようにしか見えなかったそうです。山の中にいる山婆などたぶん誤解されてたんでしょうね。
 
 とりあえず、百鬼夜行の世界はまた、あとにしましょう。


わがままシャベルのTOPへもどる
◆エフガーデン◆きんや先生情報/雑木ばなしーススもスス、スシもスス 無題ドキュメント 無題ドキュメント 無題ドキュメント