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Vol.57きんや先生の雑木ばなし [12/8]


kinya

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ミカンは親しみのある「南国」なのである


 

 北国育ちの私にとって、憧れの南国を象徴する食べ物はなんと言っても「みかん」であった。バナナやパイナップルはあまりにも南すぎて、そんな美味しい果物が育っているところなど、想像もできない遠い世界でイメージがわかなかったのだ。
 その点「みかん」は冬になれば毎日食べることが出来た親しみのある「南国」なのである。冬のコタツの上には欠かせないお菓子のような果物だ。

 しかし、リンゴやナシ、カキのように、近所でミカンのなっている木を見ることはない。子供心に「ミカンと言うのは暖かいところじゃなくては成らないものなんだ」と思っていた。
 つまり「ミカンのなるところは1年中暖かい、素晴らしい、豊かな、天国のようなところなんだ」と、決まってしまっていたのだ。

 

 あの頃ミカンは木の箱だった。
 箱に貼られた紙は、風邪をひかなければ食べられなかった「ミカンの缶詰のラベル」と、いたずらをして叱られ、閉じ込められた押入れのお茶箱に張ってあった「茶摘みの絵」とともに、私の南国志向を決定付けたエキゾチックなイラストであった。もちろんリンゴも木の箱だ。

 父親が毎晩組み立てていた金槌の音と、籾殻を間に詰めながらリンゴを1個ずつ詰める「ズンズン・・・」という音は、今でも鮮明に浮かんでくる。
 いつの間にかどちらもダンボール箱変わったが、1個ずつ包まなくてもいいミカンは、リンゴより大分早かったと思う。

 

 南北に長い日本列島には2種類のミカンが自生する。
 「左近の桜、右近の橘」として知られる「タチバナ」とシイクワーサーで有名になった沖縄の「ヒラミレモン」だ。

 タチバナは、奄美大島から伊豆半島辺りにかけてが原産。高知には天然記念物に指定されている野生林がある。文化勲章にデザインされている五弁の花を咲かせる。果実は3pほどで小さく、酸味が強すぎて生食には向かない。

 シイクワーサーのヒラミレモンの果実はやや大きい4pほど。オレンジ色に熟すと種は多いが甘くておいしい。ちょうどタチバナと入れ替わりに、奄美大島より南のいわゆる亜熱帯の山に生えるのだ。

 お正月のお供え餅の上に飾るのが「ダイダイ」。インドが原産で、成熟しても落下しにくく、1本の木に今年の青い果実と去年の橙色の果実が実っている姿が見られることから子孫繁栄の象徴として飾られるようだ。
 こちらも酸味が強くて生食には向かず、マーマレードなどに加工されている。

 紀伊国屋文左衛門が江戸に運び大金持ちになった事で知られるミカンは「キシュウミカン」で明治の中ごろまでは日本を代表する品種だったが「ウンシュウミカン」の出現で激減。葉をつけて鏡餅用に出回る程度になってしまったそうだ。
 ミカンの世界もなかなか厳しいようだ。

 

 このウンシュウミカンは皮が剥きやすいうえに種がない。
 鹿児島で500年前に生まれたとされるが、全国的に栽培が普及したのは、明治になってから。
 昔は種のない果実を食べると家系が絶えると嫌われていた時期があったらしいが、いまやそれが逆にヨーロッパやアメリカでも栽培されるまでになった。
 品種改良もされながら子孫繁栄し世界中にひろまるミカンとなったのだ。種がなくても良いものは広がる。すばらしいことである。

 

 現在、住家としている千葉周辺の庭にも、沢山の種類の柑橘類が植えられている。

 大きな夏みかんやユズなどに混じって、キンカンは小さな花を沢山咲かせたようで、見た目も楽しい。中国が原産で皮にも甘味や香りがあり、皮ごと生食する。車の運転中の眠気覚ましにはピッタリで、季節にはポケットに入れておき、重宝している。

 ビタミンC,B1、B2を豊富に含み、柑橘中最も栄養価が高いとされています。木全体の高さも2mほど。庭木としてもっと植えられて良い木でしょう。

   
   

 柑橘類の出回る寒い季節は酒の美味しい季節でもある。特に冷え込んだ夜は熱燗が恋しくなるが、焼酎のお湯割もいいものだ。安い焼酎でかまわない。熱いお湯に、濃い目に焼酎を入れ、ユズをひと絞り、これで最高の晩酌になる。
 ついつい飲みすぎてしまうのが難点だが、長い夜だ、ゆっくり楽しみたいものです。

 前回はクリの話でした。「モモ、クリ3年、カキ8年」と言いますが、その続きは「ユズの大馬鹿18年」だったかな?種から育てると実がなるまでは15年はかかるユズですが、その果実の汁の一滴は、安い焼酎も泡盛も、15年の「古酒」に勝つほどに変えてしまう偉いミカンなのだ。