きんや先生の雑木ばなし    vol.12 うさぎ受難の日



 

 「ふるさと」という、国歌にしてもいいような名曲があります。
うさぎ追いしかの山・・・・と歌い始めますが、
今の人たちで川で小鮒を釣ったことのある人数に比べたら
山でうさぎを追っかけた人数はかなり少ないのではないのでしょうか?

 
 
 

 私が卒業した岩手県の遠野高校は、今年で創立100年を迎えます。岩手ではかなり
古い学校です。現役の生徒はどう思っているかわかりませんが、
卒業したわれわれの誇るべき思い出の行事に「ウサギ狩り」があります。
じつにバカバカしいといえば、そのとおりなのですが・・・。
これを伝統としてずっと続けてきたのです。

 秋の遠足に全校生徒(当時1000人)で学校の裏山『物見山』にでかけます。
2時間ほど登った山の中腹に毎年行なう狩場の草原があります。
その丘の一番上にブラスバンドのラッパ隊がならび、
少し下にバレーボールなどのネットを広げた捕獲隊、
その左右から扇をひろげたように1,2,3年女子、1、2年男子が静かに静かに

狩場を取り囲みます。
 
一番下では三年男子がおもいおもいに木の棒などを持ち、
ラッパ隊の合図を待ちます。

 果たして今年は何羽捕まえることが出来るか。
ようやく追い手になった三年男子は興奮し、まわりの女子たちはうさぎが自分の所にこないように願い、
男の何割かは「ばかくせー」と、ただ、突っ立っているだけである。

 
   
100年の歴史ある校内行事  
 
うさぎ狩りの図
 
     

 
合図と共に全員が大声を出し、三年の追い手は棒キレを振り回しながら
高低さ30メートル程の丘を一気に駆け上がるのです。

ウサギの数も減って1,2年のときは姿も見せなかった。もちろん収穫ゼロ。
今年こそ、今年こそは・・・と我々は声をかぎりにかけあがった。
 3年目。いました一羽のバカなウサギ。ピョンピョンとジャンプしながら逃げていった先には―。
ああ、かわいそうに悪魔のようなネットが・・・。

 ネットをもって待っていた男達、なにせ三年ではじめて逃げてくるうさぎを見たもので、ちょっとあせった。

 ―以下、ネットを持っていたメンバーの一人、白岩の証言
「ジャンプしてきたから、はねると思ってタイミングをあわせてネットをあげたら
下をくぐって逃げた・・・でも、俺じゃねー、ほんとだってば、俺じゃねーよ」
 

わたしは絶対、信用してないのです。「おまえだよ!」。
 
   われわれが入学する前の年までは順調に一羽ずつは捕まえていたようで、
それ以降、30年収穫ゼロが続いている。最近はうさぎの姿もみないらしい・・・。

 もちろん一羽で生徒全員にウサギ汁が分配されるわけはなく、少ないときは
先生達にその場でつぶされ(殺して肉にすること)、
先生達の口にしかはいらなかったようだ(このウサギ汁がうまいんだな・・)。
そうなるとやっぱりバカバカしいということになるのかな?
 
東北のうさぎ
 
 とにかくうさぎは、大事な、特に冬場のタンパク源でありまして。
私も家で飼っていたうさぎを、何度つぶしに毛皮やさんに持っていったことやら・・・ 。

 とにかく現実はどうであれ、収穫ゼロが続こうとこの伝統は200年300年と続けて欲しい。
とりあえずこんなことまじめにやったきた学校なんて日本中どこにもないはずだから・・・。

 


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